農業

米作り奮闘記(2)

田植えから3か月が経った。稲は穂が付いて見事に垂れ下がっている。あと一週間もすれば待ちに待った稲刈りだ。

「待ちに待った稲刈り」。これは、心躍る気持ちから出た言葉ではなく、収穫適期に入ったら少しでも早く収穫したいという心配の気持ちから出た言葉である。

籾から始まって籾をつけるまでの稲の生涯に乗り越えるべき試練がここまであるとは。全ての試練が平年以上と言っても過言でもない、今年の夏の3か月を振り返ってみよう。

長雨

梅雨になれば雨が降る。そんなのは当たり前な話だが、今年の梅雨は一味違った。なんせ、7月後半になり梅雨もそろそろ明けるのかと思ったら、連日降りしきる雨で、梅雨が明ける気配がいっこうにない。

米以外の農作物では水害で全滅したというニュースが流れ、今年の夏野菜は大きく値上がりした。

しかし、そこは水田。

取水口もあれば排水口もある。閉じている取水口を乗り越えて水が入ってこようが、排水口を全開にすれば水は抜けて、田んぼが水没する事はない。しかし、排水先の川の水位が田んぼと同じ高さまで上がってくると話が変わってくる。

逃げ場を失った水はみるみると溜まっていき、稲が水没し始める。既に全開で水を抜いていたので、これ以上は打つ手がないのである。打つ手がなければ雨の田んぼの横で突っ立っていても意味がない。家に帰って雨が止むのを待つしかない。

雨が上がった翌日。田んぼの水位が少し下がって、稲の先っぽが見えてきた。心配していたが、まだ生きていた。取り越し苦労だったのか、稲は思っていたより水に強いようだ。

そして、稲も日を追うごとに大きくなってくる。ここまでくればもう水没する心配はないだろう。

日照り

8月に入って長かった梅雨が漸く明けた。そして、快晴はそのまま一か月間続いた。雨と言う雨は一度降っただけで、遂には田んぼへの送水が止まった。連日35℃を超えるような暑さでは4日もしないうちに田んぼが干上がった。

今は出穂期と言われる稲に穂が出揃う時期で、稲の成長に水が必要な時期である。地域の水利委員に電話をして水を送って貰うように頼むと、なんと亀が用水路に詰まってすぐには送水が出来ないとの事。

この地域はもともと雨が少なくて、昔は水の取り合いが起きていた地域だが、現在は耕作放棄地が増えてその心配は無くなったらしい。水源である池の水は豊富にあるのだが、水が回ってこないというのは情けない。

翌日、前述の水利委員から水を回せるようになったとの連絡があったが、順番に回していくから1日待って欲しいと伝えられる。干ばつの被害が出ている田もあるらしく、水利委員の声からは疲れが感じられる。

次の日、やっと水が回って来たが勢いがまるで無い。用水路が老朽化していて、所々で水漏れしているとの説明をされた。同じ地域でも、少し場所が違うだけで水が来るところと来ない所があるのを身を持って経験する事が出来た。いつか自分の田を取得する時にはこの教訓が役に立つだろう。

害虫

今年の台風10号については記憶に新しい人も多いだろう。予報では過去最強クラスになると言われていたが、思ったより勢力は拡大せずに進路も逸れた為、想定されていた被害が出なかった台風だ。自分の田んぼでも台風の過ぎた翌日に稲の倒伏が少し見られただけで、何事もなかったと思われた。

今年は害虫が多く8月中旬にはコブノメイガの防除をしていたが、病害虫防除所からはトビイロウンカの発生警報が新たに出ていたので、田んぼの中に入りウンカの発生状況を確認した。

もちろん今まで実物のウンカなんて見たことはないのだが、Youtubeでもウンカ関連の動画はたくさんアップされているのでウンカの姿かたちは知っていた。動画を見たせいか、稲の株元にウンカが一匹ついていて慌てている夢も一度見た。

繁殖力が凄まじく、一匹でもいると稲への被害が広がっていくウンカだが、なんと台風で倒れたと思っていた稲周辺に大量に発生しているではないか。短翅型と呼ばれる羽が短くまるまると太った個体も複数匹確認出来た。特に繁殖力が高いのが短翅型のウンカで、こうなると農薬を使って防除しないと坪枯れという局所的に田んぼが枯れる現象が起き、更に進行すると反枯れと言って田んぼ全体に広がってしまう事もある。

いくら農薬を散布しても一匹残らず駆除する事は出来ないので、生き残ったウンカが繁殖して再び被害をもたらす。農薬散布でウンカの密度を抑制して出来るだけ早期に収穫をするのが唯一の手段なので収穫までは心配の日々が続くことになる。

ウンカ被害が出ていない場所では穂も黄色に変わり見事に垂れてきて、見ていると気持ちが和む。ここまで被害が広がってこない事を願いつつ、1週間後の収穫日を待つとしよう。

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